このプロジェクトは何か — 「儲ける」ではなく「測定する」
1. 一言でいうと
「暗号資産の自動売買で儲かるのか?」という問いに、実験で最終回答を出すプロジェクトです。対象はGMOコインの ETH_JPY(イーサリアム/日本円)という特定の市場に絞り、そこにエッジ(統計的優位。取引コストを差し引いてもプラスが残る、偶然では説明できない利益の源泉)が存在するか否かを白黒つけます。実際のお金はまだ一切投入していません(リアルマネーへの配線なし)。そして現時点の結論はこうです——テスト済みの全戦略が、「ETHを10枚買って持っているだけ」というベンチマーク(比較基準となる素朴な戦略)に勝てていません。1
2. なぜ「儲けるプロジェクト」ではないのか
先に、すべてが理想的に進んだ場合の上限を計算しておきます。運用資本は約10 ETH ≈ 262万円(2026-06-10時点、1 ETH = 262,456円)。現在唯一生き残っている仮説(記事6)の楽観上限「1約定あたり +2.53bps」——bps(ベーシスポイント)は割合の単位で、1bp = 0.01%——が完全に実現し、メイカー(指値を置いて相手の注文を待つ側。記事2で詳述)として1日50約定 × 0.5 ETHを毎日こなせたとしても、粗利は月約4.9万円。日本の税制では暗号資産の利益は雑所得(限界税率およそ35〜43%)なので、税引後は月約1.7〜3.4万円です。
成功したときの取り分の上限が、最初からこの規模しかない。だからこれは収入を狙うプロジェクトではなく、上限が固定された測定プロジェクトです。
継続/撤退の基準
測定である以上、終わり方も先に決めてあります。
- 継続には税引後で月2万円の見込みが必要(継続フロア)
- 約定機会 × 上限の粗利見積りが月3万円未満なら、市場が小さすぎるとして打ち切り(キャパシティ・キルゲート)
- 最終期限は 2026-09-30。それまでに統計的統制をすべて通過した候補が出なければ、エッジ探索は終了
3. システムの全体像(1段落版)
GMOコインのWebSocketから約定・気配・板の情報をリアルタイム受信し、PostgreSQLとS3に追記専用(append-only。一度書いたデータは後から書き換えない。都合のよい改変を不可能にするため)で保存します。バックテストは指値注文(価格を指定して置き、相手が来るのを待つ注文)のみを許可し、実測した往復コスト5.6bpsと信用建玉コスト0.04%/日を必ず課金。Rust製の高速な特徴量生成を経て、すべての実験を台帳に記録し、統計ゲートで合否判定し、人間の承認を経てマージされます。
GMO WebSocket(約定・気配・板)
│ リアルタイム受信
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PostgreSQL + S3(追記専用)
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バックテスト(指値のみ/往復5.6bps + 建玉0.04%/日を課金)
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Rust特徴量生成 ──► 実験台帳 + 統計ゲート
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人間承認つきマージ(実弾への配線なし)
この解説シリーズを読むのに、コードを読む必要はありません。
4. このサイトの読み方
本解説は全6本です。
- 本記事 — プロジェクトの正体と上限の数字
- 取引コストの算数 — 始める前に負けが決まる仕組み
- 自分をだまさないための仕組み — ホールドアウト法と実験台帳
- 失敗事例: Phase-3d汚染 — 「ベンチマークに肉薄した戦略」が幻だった話
- 14連敗の記録 — 棄却された仮説たち
- 最後の仮説 — 生き残った1本と、終わらせ方の決め方
先に予告しておくと、このサイトの本体は成功談ではありません。記事4と記事5にある失敗の記録こそが、このプロジェクトが生産した知識の本体です。